探県記 Vol.85

清水寺

(2016年9月)

KIYOMIZUDERA

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安来節のふるさと島根県安来市に
ひとつの山まるごと境内という清水寺がある

 

島根県の東部、ユニークな踊りで知られる民謡〝安来節〟のふるさと安来市に、山陰屈指の厄除け寺、清水寺があります。開山は、今から1430年も昔の、用明天皇2年(587)のこと。山城国の住人、尊隆上人によって開かれたと伝わります。
 
開山以前は、大樹が鬱蒼と生い茂るひとつの山でした。夜になると一条の光が突如現れるものですから、里の人々は気味悪がって誰も近寄らなかったそうです。そんなある日、山陰道を通りかかられた尊隆上人が、十神山の神様に頼まれて、その光の源を探しにこの山に入られました。そして、ひとりの老人から観音像を託された尊隆上人は、小さな草堂を建てて安置されました。これが清水寺縁起。
 

本日の案内人は清水寺の清水谷 善曉さん。探県隊は、木内キャプテンと、地元さぎの湯温泉〝竹葉〟の女将、小幡美香隊員です。
 
スタートは大門駐車場。案内板には「石段の数は最初の6段を上り、川沿いに大門までが108段、また、三重の塔までは333段」と記されています。
 

「清水寺は、500段とか、600段とか、ものすごく険しい石段があるように思われていますが、それは間違い。実際は、なだらかな石畳と石段の、ゆるやかな上り坂なんですよ」と清水谷さん。
 
石段の脇を走るのは、快いせせらぎ。清水寺の名前の由来にもなった清い水が、絶え間なく流れています。
 

この日は、あいにくの小雨空でしたが、木洩れ日が和らいで、なんとも神秘的。
「光が射して幻想的ですね。清水寺には何度も訪れていますが、こんな光景は初めて。雨の日で良かった」と小幡隊員。ロマンチックです。
 
大門をくぐり、手洗舎まで来る頃には雨もすっかりあがって、雲間から青空が見えてきました。

 

国内で唯一、最上階まで上れる三重の塔
おっかなびっくりの先に待っていたのは大パノラマ

 
根本堂を目指して石段を上りきると、まずは狛犬が出迎えてくれました。
「珍しい尻上がりの狛犬です。〝尻上がりに良くなる〟ということで縁起が良いとされています」と清水谷さん。
「それはいい。あやかりたいですね」と木内キャプテン。
 

こうして、目の前に出現した根本堂は、明徳4年(1393)に建立された清水寺の本堂。戦国の兵火をまぬがれた唯一の建物で、国の重要文化財に指定されています。平成4年(1992)に解体修理が完了した姿は実に厳か。5年程前に吹き替えられたという立派な〝こけら葺〟の屋根が、威厳を放っています。
 

堂内では、奉納された7枚の絵馬を見ることができます。最も古いものは、大きな黒馬が描かれた室町時代の絵馬。特に珍しいものは、尼子十勇士の絵馬。なんでも、尼子十勇士全員が描かれた資料は、唯一この絵馬一点なのだそうです。
 
本堂を出ると、今年(2016)完成したばかりだという、全国でも大変珍しい「百観音霊場お砂踏み」が見えてきました。この百観音霊場お砂踏みとは、三十三の霊場石と中央の仏足石からなる巡礼の場。霊場石の下には出雲三十三観音霊場・西国三十三観音霊場・中国三十三観音霊場の札所寺院の御砂が納められていて、御札を納札箱に納めて回ることで、百の観音霊場をすべて巡礼するのと同じ功徳が得られるという、大変ありがたいもの。敷き詰められた玉石を踏みしめることで、足つぼマッサージの効果も得られるという特典つきです。
 

さて、いよいよ、高さ33.3mの県指定重要文化財「三重の塔」へ上ります。地元の大工さんが、京都の宮大工に修業して、3世代に渡って造り上げたという、安政6年(1859)の建築です。
「最上階まで上がれる三重の塔は、おそらく清水寺だけでしょう」という清水谷さんの説明に、テンションが上がります。
 

立ちはだかるのは、階段というより、限りなく垂直に近い角度でかけられた梯子(はしご)段。頭をぶつけないように、一段一段慎重に上って、ついに最上階!
「すごい! すご~い!」と小幡隊員はじめ、一同大興奮。
「目の前に広がるのは能義平野。その奥が中海ですね」と清水谷さん。
「自然界には、いろんな緑があるんですね」と木内キャプテン。
雨に洗われた空気は遠く澄みきって、最上階まで上ったご褒美に、感動的な大パノラマが待っていてくれました。

 

【アクセスについて】
●清水寺へのアクセス/JR安来駅より車で10分
●島根県安来市清水町528

【WEBサイト】安来清水寺