探県記 Vol.58

川本町エゴマ

(2016年1月)

KAWAMOTOCHO EGOMA

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今や、“川本町といえばエゴマ”ですが
最初は、たったひとりでのスタートでした

 

近年、健康食材として一躍脚光を浴びるようになったエゴマ油ですが、その歴史は意外にも古く、日本には縄文遺跡からエゴマの種が出土しているほど。そして江戸時代までは、食用はもちろん灯火用に、さらには雨傘や提灯などに塗り防水用などにも、エゴマ油はたいへん重宝されていたのだそう。けれど幕末から明治になると、生産効率の高い菜種が輸入されて、エゴマの栽培は激減していったのだといいます。
 
島根県邑智郡川本町で、エゴマ栽培が始まったのは、平成14年のこと。現在、有志で結成されている「川本エゴマの会」代表、竹下禎彦さんがたったひとりで始めた栽培でした。
 
竹下さんは、52歳で郵便局を早期退職。庭仕事が好きで庭師を目指そうとしていましたが、ヘルニアになり泣く泣く断念。そんなとき、旅行先の岐阜県高山市の朝市でエゴマに出会い、その効果に惹かれて栽培を決意したのでした。
 

平成16年、地元の農家25戸で「川本エゴマの会」設立。現在では“川本町といえばエゴマ”といわれるまでになっています。
 

良質な脂肪酸α-リノレン酸を多く含む
有機栽培100%のエゴマ油は畑の青魚

 

「エゴマは畑の青魚ですよ」と竹下さん。
そのこころは、エゴマ油には、α-リノレン酸という良質な脂肪酸が多く含まれていること。このα-リノレン酸、体内では合成されず、食事でしか摂取するしかなく、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に作りかえられる物質なのです。
 
EPAとDHAは、青魚に多く含まれる必須脂肪酸のひとつで、体内になくてはならない物質として有名ですね。
 
また、エゴマに含まれるルテオリンは抗酸化作用が強く、非アルコール性脂肪肝炎や、それに伴う肝細胞のがん化を抑制することが実験で発見されているのです。
 
毎日大さじ1杯を目安に摂取するのがよいとされていますが、熱を加えると成分が壊れてしまい効果が半減してしまうのだとか。
「エゴマ油に、醤油と酢と昆布茶で作るドレッシングがおすすめ」と竹下さん。
 

「しかしこんなに小さな粒から、油が採れるんですね」と驚く内山キャプテン。
「小さな房の中に育つエゴマの種子は4粒と決まっていて、その45%が油なんですよ」と竹下さん。
 
現在、川本エゴマの会では、遊休水田も利用してエゴマ畑を拡大。町内で60ヘクタールまでに成長しています。
 
 

【アクセスについて】
●川本エゴマの会へのアクセス/JR温泉津駅から車で約30分
●島根県邑智郡川本町三原149-6

【WEBサイト】川本町観光協会