探県記 Vol.53

花御所柿

(2016年1月)

HANAGOSHOGAKI

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きめ細かくてジューシー、糖度は20度以上
限られた地区でしか実らないこの甘さ

 
 
鳥取市街から車を走らせて南へ10㎞ほど、11月下旬の八頭郡八頭町は、たっぷり丸い実をたわわにつけた“花御所柿”の柿畑が、あちらこちらに広がる実りの季節。下草の緑と柿色のコントラストが鮮やかで、テンションも自然と上がります。
 
花御所柿は、八頭町花を原産として、鳥取県東部の因幡地方でのみ栽培されるとても希少な甘柿です。
その歴史は、約220年前の天明年間、八頭町花の農民だった野田五郎助翁が、大和の国から穂木を持ち帰り、庭先に接木をしたのが始まりと伝わっています。
 
それから120年ほど経った明治42年、農林省園芸試験場長であった恩田鉄弥博士がその味を大絶賛。生産地の名前をとって“花御所柿”と命名されたということです。
 
花御所柿は、肉質がとてもきめ細かくて、すこぶるジューシー。糖度は20度以上にもなる甘~い品種で、一度食べたら虜(とりこ)になること必至。恩田博士の気持ちが手に取るようにわかります。
 
こんなに美味しい柿ならば、もっと生産すればいいのにと思いますが、なぜか、この花御所柿、限られた地区だけでしか高品質に実らないのだとか。適した気候風土に加えて、栽培方法の難しさも手伝って、ときに“幻の柿”とも呼ばれることがあるようです。
 

めざすは、日本随一のこの味が全国に知れ渡ること

 
国道29号沿いに見えてきたのが、産直販売所の“物産館みかど”。
 
物産館のある大みかど地区は、品質の高い花御所柿がとれる限られた地区のひとつで、90軒の生産者で5000本の柿の木を育てています。
 
「葉っぱが落ちかけるときに実が色づくのが特徴で、葉っぱが落ちてから収穫するのは花御所柿だけ。全部の栄養分が実に行くようにしているのではと考えられています」と教えてくださったのは、花御所柿を育てる会の会長、細田正治さんです。
 
収穫が終わると春までは剪定、春から初夏にかけては摘果、下草がのびれば刈り取りと、作業は一年中続きます。そんな生産者のみなさんのご苦労があって、花御所柿が育っています。
 
各地に、〇〇のマンゴー、〇〇のメロンなどと有名な果物があるように、めざすのは、花御所柿が全国的に知れ渡ること。柿色に染まる美しい風景とともに、特別なその味は、きっと全国の方々に受け入れられることでしょう。

 
【アクセスについて】
●物産館みかどへのアクセス/JR因美線郡家駅から車で約12分
●鳥取県八頭郡八頭町大門389-1

【WEBサイト】物産館みかど