探県記 Vol.32

松江城

(2015年8月)

MATSUEJO

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リベンジの国宝指定「松江城天守」
極小の釘穴が証明した創建年。

 
今年(平成27年)の7月8日、松江市のシンボル「松江城天守」が国宝に指定されました。
面積は姫路城に続く2番目、高さは姫路城、松本城に次いで3番目、そして古さでは5番目となるお城で、全国に現存する12天守のひとつ。そのうち、国宝は5城だけとなっています。

「松江城が、今なぜ国宝になったのか、その理由が一番聞きたいんです」と内山キャプテン。
「一番の理由は、2枚の祈祷札が発見されて、それが確かに松江城のものであることが立証できたのが大きいですね」と、国宝化推進室の占部吉博さんは話します。
 

昭和10年、松江城は国宝に指定されていました。がしかし、昭和25年の文化財保護法の制定によって国宝指定の基準が変わり、重要文化財に改称されたのです。その理由は、歴史的事実がはっきりしないことでした。
 

松江城は、慶長16年(1611)、豊臣秀吉と徳川家康に仕えた、松江開府の祖・堀尾吉晴によって築城された、4重5階天守、1階付きの平山城です。けれど、確かにあったはずの創建年を明らかにする祈祷札が、長い間、行方不明になっていたのです。
 
祈祷札の捜索が、官民一体となって行われ、そして平成24年、松江城近くの松江神社で2枚の祈祷札を発見。確かに「慶長十六」と墨書きされていたのですが、そこには「松江城」の文字は一切なかったのです。

松江城の柱1本1本にある釘穴やシミの位置などが、祈祷札と合致するか、検証する作業が行われて、ついに、2枚の祈祷札のものとピタリ一致する柱が発見されました。
その柱の場所は地階、現存する国内12天守のうち唯一松江城にだけある井戸の左側、小さな小さな釘穴が見つけられたことに感動です。
 
 

別名を千鳥城
昔も今も、城下を見守る松江の宝。


国宝の指定を受けて、たくさんの観光客で賑わいを見せる松江の城下。そんな微笑ましい喧騒を、松江城は、どっしりと風雅に、ただ見守っているようでした。
 
大手前駐車場から、大手木戸門跡を通って、三ノ門跡、二ノ門跡へ、そして一ノ門を潜ると、右側にドドーンと出現する松江城。全面に付櫓をもつ複合式天守で、各屋根の千鳥破風(入母屋破風とする見解も)から、千鳥城とも呼ばれ親しまれている松江城。昔も今も、人々の暮らしを静かに見守る松江のシンボルであり、松江の宝なのです。

 
【アクセスについて】
●松江城へのアクセス/JR山陰本線「松江駅」からレイクラインバスで10分 大手前下車すぐ
●島根県松江市殿町1-5
【WEBサイト】 国宝松江城ホームページ