探県記 Vol.17

石州瓦

(2015年3月)

SEKISHUGAWARA

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北前船に乗せられて
遠く北海道にまで行った赤瓦

山陰の家の特徴といえば、やはり、赤瓦なのではないでしょうか。ことに、島根県西部の石見地方は、日本のフィレンツェとは言い過ぎでも、赤瓦を乗せた集落の風景が印象的で、あたたかな気持ちにさせてくれます。
 
石見地方で発達した、石州瓦の歴史は、江戸時代初期にまで遡ります。
伊勢の国、松坂城より、浜田藩初代城主、古田大善太夫重治が浜田に入ったとき、摂津国より瓦師を連れてきて、瓦を造らせ、築城したことに始まります。
 
鉄分の少ない良質な白陶土に、出雲地方で採れる来待石を釉薬にすることで、赤褐色の瓦が生まれました。そして、いつしか、石州瓦=赤瓦となったのです。
特徴は、水の浸透が極めて少なく、凍害にも塩害にも強いこと。その高い品質は徐々に全国に広まり、近県の農村や漁村にはもちろん、かの北前船に乗せられて、北海道まで届けられていたといいます。
 

 

創業200年の伝承技術で生まれる
新しい石州瓦の世界にぞっこん。

江戸時代後期の文化3年、浜田藩より瓦株を受け、亀谷郷という地に窯場を造った、亀谷初代岩田清次という瓦師がいました。浜田藩初代城主が連れてきた瓦師と、浜田藩の御殿女中との間に生まれた子がその人、現在の亀谷窯業さんの初代です。
創業以来200年以上、石州瓦を造り続ける亀谷窯業さんは、現在、数えて9代目となる亀谷典生さんが、その技術を守り高めています。
 

 
亀谷窯業さんの瓦は、石州瓦の中でも焼成温度の高さが特徴。通常の石州瓦も他産地の瓦より高い1200度以上ですが、亀谷窯業さんの場合は実に1350度、世界一の高温で焼成します。結果、強度が増し、吸水率も1%台という驚異的な数値が表れています。
なにごとにもオートメーション化が進む現代ですが、亀谷窯業さんでは、1枚1枚、手作業で釉薬をつけるなど、手間ひまを惜しまず、伝統製法を貫いています。
 

 

近年は、創業200年の歴史に裏付けされた確かな技術で、新しい商品造りにも意欲的。タイルは都会で人気のレストランの壁にも張られています。

 

 

 

「このおろし器は実に使い勝手が良さそうですね」と内山キャプテン。
「サメ皮以上に香りが立つように造っています」と9代目。
築90年にはなるという祖父母の代からの家をリノベートしたギャラリーには、ぎっしり瓦食器が並んでいます。
 
【アクセスについて】
●亀谷窯業へのアクセス/JR山陰本線浜田駅より車で約7分
●島根県浜田市長沢町736