string(21) "35.516646, 134.172360" 探県記 Vol.149|山陰いいもの探県記|山陰いいもの探県隊

探県記 Vol.149

カニダノミ

(2020年1月)

KANI DANOMI

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鳥取大学発のベンチャー企業が
キチン・ナノファイバーという
新素材を使った化粧品を発売

 
日本一のカニ水揚げ量を誇る鳥取県で、カニ殻を原料とするスキンケア化粧品が発売され、地元はもとより首都圏で密かなブームになっています。ハンドクリームはべたつきがなく、手がすべすべに。モイスチャージェルは、ぷるっとしていて、使用後はしっとり潤います。

 
その名も『カニダノミ』というシリーズ商品のラインナップ全てに、カニ殻から抽出されたキチン・ナノファイバーが配合されています。発売元の「株式会社マリンナノファイバー」は、鳥取大学発のベンチャー企業。さっそく、鳥取市湖山町の鳥取キャンパスにある本社を訪ねてみました。

 
鳥取県では毎年、大量のカニ殻が捨てられています。それを有効活用しようと、カニ殻の主成分キチンの研究は古くから行われてきました。しかし、キチンは創傷被覆材や繊維、健康食品など、その利用は限定的でした。それは、不溶性食物繊維としても知られるキチンは溶剤に溶けにくい性質があり、扱いづらいためです。この長年にわたる課題を解決したのが、大学院工学研究科の教授でマリンナノファイバーの社長、伊福伸介さんです。

 

 
伊福教授は12年前、鳥取大学に着任。「森林国の日本では、木材由来のセルロース・ナノファイバーの技術研究が世界でも進んでいました。この技術を応用すれば、キチン・ナノファイバーが取り出せるかもしれないと考えました」。研究開始から早々、推測は見事に的中。1ヶ月ほどで、キチンを水中で極限まで粉砕し、頭髪の太さの1万分の1のサイズ、10ナノメートル以下の繊維状にすることに成功したのです。

 
代表の伊福さんは農学部と共同研究、獣医学研究科と臨床試験に取り組みました。すると、次々と優れた生理機能が検証され始めました。例えば農作物の病気を予防、服用による腸の炎症の緩和、肌の水分力アップ、負傷した動物の皮膚が早く回復したなど・・・・。まるで夢のような素材といえます。

 

研究と実用化の二本立て
検証を積み重ねるほどに
カニ殻の幅広い可能性を実感

 
「鳥取県の新産業の活性化につなげていきたい」と4年前、伊福教授は会社を設立。大学内にその本社があります。同時にキチン・ナノファイバー製法技術で特許を取得し、翌年から千代水工場を操業。現在は、全国の健康食品や化粧品などのメーカーに、商品の原料としてキチン・ナノファイバーを提供しています。
さらにネット販売を中心に、自社オリジナルのスキンケア商品の販売もスタートさせました。化粧品の開発は、ナノファイバー研究の経験がある伊福佐苗さんが担当されています。

 
「肌荒れを防ぐ効果も検証できました。それで最初に、手荒れで悩んでいる女性のためのハンドクリームを開発しました。限界量までキチン・ナノファイバーを高濃度に配合した自信作で、一度使用するとリピートされる方が多いんですよ。このパッケージにしてから、まだ3ヶ月ほどですが、ぐっと手応えを感じているところです」と伊福佐苗さん。目を引くパッケージデザインは、CMなどを制作している東京の大手プロダクションに依頼。同社の取締役が鳥取市出身で、「カニの化粧品とは面白い。ぜひ応援したい」と申し出があったことから実現したそうです。

 
「私自身が驚くほど、キチン・ナノファイバーの様々な機能が分かり、ますます期待が高まっています。今後も多くの研究者や技術者の方々と共同研究を幅広く行い、実用化につなげるのが私の役目だと思っています」と語る伊福社長。

 
「カニさんがつくってくれたキチン・ナノファイバーを私たちが取り出しているだけ」と自然界の資源に感謝の気持ちを忘れない伊福社長。甲殻類から抽出されるキチンは、地球上で大規模に活用できる「最後のバイオマス」と言われています。まだまだ未知数のキチン・ナノファイバー。その活用法がもっと広まれば、敏感肌や健康に悩む人だけでなく、資源循環型の社会づくりにもつながることでしょう。まさに神だのみならぬ、カニだのみ!

 
 
【アクセスについて】
●株式会社マリンナノファイバーへのアクセス/鳥取大学前駅から徒歩で約5分
●鳥取市湖山町南4丁目101 鳥取大学VBL棟4Fインキュベーション室
【WEBサイト】株式会社マリンナノファイバー