探県記 Vol.126

ベッカライ&
コンディトライ ヒダカ

(2018年4月)

BCKEREI KONDITOREI HIDAKA

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世界遺産の町並みで本場ドイツのパンを焼く
『ベッカライ&コンディトライ ヒダカ』は
ご夫婦でマイスターを取得する唯一のお店

 

2007年、世界遺産に登録された日本最大の銀鉱山「石見銀山」は、島根県の真ん中あたり、大田市にあります。江戸時代には天領となり、石見銀山領の中心地として栄えていたのが、世界遺産への玄関口となる大森の町並み。
国の重要伝統的建造物群に指定される、この長閑な町並みの一角に、オープン3年目となる有名なパン屋さんがあります。名前は『ベッカライ&コンディトライ ヒダカ』。ドイツで国家資格を取得してマイスターになった日高晃作さんが、同じくマイスターで焼き菓子担当、現在は育休中という奥さまと開いた話題の名店です。
 
落ち着いた大森の町並みにしっくり馴染んだ店舗は、古民家を再生したやさしい建物。元は、1956年創業の『中村製パン』があった場所。店内に入る前から、パンの焼ける良い香りが漂っています。
引き戸を開けて入った店内は、こぢんまりとして、清潔で、自然と笑顔になれる空間でした。

 
次から次に焼き上がった商品が並べられる棚の上、一番気になるのは、やはり本場ドイツ仕込みの〝ブレッツェル〟。外はカリッと、内はモチッと、そして塩加減が絶妙。並んだ先から売れていくという人気商品なのです。

 
店舗奥の工房で、忙しく働く日高さんに、お邪魔にならないよう、お話を伺いました。
日高さんは、岡山県の出身。ドイツ西部のケルンでドイツ語を学び、マイスターの国家資格を取得。南ドイツのヘレンベルグで1835年創業の老舗に2年間勤務した後、岡山、広島、東京を経て、現在の大森町という経緯。
 
「東京で、大森町にある医療機器メーカー中村ブレイス(株)の中村社長と知り合い、ここに来ることになりました。最初、奥さんは大反対で、どうしようか迷った状態で下見に来たら、もう店舗の工事がはじまっていて」と当時を振り返って苦笑い。
今では奥さまも「子育てするにはいい所」と、気に入っている様子だそうです。

 

ワカメ、クロモジ、カリン、イチジク…
地元食材を使って、いかにおいしいパンにするか!大森町で見つけたおもしろいテーマでパンづくり

 
この日の新作パンは、和江のわかめがたっぷり入った〝わかめチャバタ〟
「漁師さんが〝いっぱい獲れたから、あんた使ってみるか〟といって、今朝、持ってきてくださった」なにより新鮮な地物の食材。クロモジ、カリン、ザボン、イチジクなど、いつしか日替わりのように、新鮮な食材が届けられるようになっています。
 

 

 
「こうして直に生産者さんと関係が築けるなんて、東京では考えられません。最初は、自分の好きなパンだけをつくろうと思っていましたが、今は、いかにおいしいパンにするかという、おもしろいテーマに毎日取り組んでいます」と日高さんは楽しそう。
店舗の奥に住居があり、庭には、「おいしいパンができたから」クロモジやカリンの木を植えたのだそうです。
 

小さな町の小さなパン屋さん『ベッカライ&コンディトライ ヒダカ』。
1日に約40種、500~600個の商品が売り切れるお店。正統なドイツパンをつくり続けながら、柔軟に地元の食材を使ったおいしい新作パンを発表しています。
 
この日も、開店時間を待って、次々にお客さまがいらっしゃる。一番乗りは、ご近所さん風の親子連れ。続いて、観光客の女子3人組に、スーツ姿のビジネスマン……。
店内が忙しくなってきたので、今回の探県隊は、ここで終了することにしましょう。
 

 
【アクセスについて】
●ベッカライ&コンディトライ ヒダカへのアクセス/JR仁万駅から車で11分
●島根県大田市大森町ハ90-1
【facebookページ】ベッカライ&コンディトライ ヒダカ